🔑Kindleに感謝 山中光義

定年後に最初に幹事をして選んだ本は川端康成の『雪国』でした。たくさん買い込んでいた文庫本を、定年後にもう一度読み直したいと計画していた最初の一歩でした。ところが間も無く、文庫本の文字が小さくて読みづらくなってきました。出たばかりの単行本だと文字も大きくて大丈夫だったのですが、何百冊かの文庫本はお蔵入りです。苦境を救ってくれたのはKindleの登場でした。文字の大きさは自由に設定できるというものです。最初の頃は、紙ベースの新刊本と同時にKindleでも読めるということではなかったのですが、やがて、ほとんど全ての新刊は、従来通りの紙印刷と同時に電子ブックでも発売されるようになって、今日に至っています。出たばかりのものは、ほとんど値段の差は無かったりしますが、少し時間が経っていれば電子ブックはうんと安価に入手出来ます。

電子ブックの利用価値の一つに、気に入った箇所にマーカーを付けて、その箇所を簡単に検索でき、必要に応じて、コピー・ペーストの形に自分のメモとかメールに転送できる機能があります。昔、文庫本などに赤鉛筆でたくさんの線を引いていた作業です。直接線を引いたり書き込んだりしていると、その本をメルカリやアマゾンで売れなくなります(実は、蔵書整理のために少しづつ両社に出品して、密かに古書店事業に手を出しているところです。これは、税務署には内緒。)最近は、Keysで読んだ本のコメントを書く機会が増えてきましたが、その時などにも大いに助かっている次第です。Kindleへの感謝の最近の例は病院でのことでした。過日、或る病気で5日間入院していたのですが、点滴のチューブや酸素吸入の管で簡単に寝返りも打てず、狭いベッドに拘束されて、譫妄状態になって夜も眠れず、怖い目に遭いました。病気に伴うこれから先の諸々の事どもに精神が錯乱するのではないかという恐怖でした。気持ちを別の方向に向けるために、Kindleの本を読むことにしました。現在私のKindleには200冊余の本が入っているのですが、昔読んだ平野啓一郎の『ある男』を開きました。2022年3月(462回)の指定図書で、中竹尚子さんの幹事でしたが、生憎の「コロナ休会」の時でした。戸籍を交換して別の人生を生きるという、ミステリー仕立ての内容で、愛、過去、出自、差別など、人間存在の根源的な問いに迫る第40回読売文学賞受賞作でしたが、思わず夢中になって読み耽ってゆく中で、個人的な不安を乗り越えることができました。因みに、消灯して暗い中でも、Kindleの画面は明るく、読書ができるというメリットもあります。

いつの日か、視力が極端に落ちて、Kindleの文字を拡大しても読めなくなる時が来るのかも知れません。その時は、(すでに、色々と出ていますが、)本の内容を音声で聴かせてくれるという機能に頼ることが出来るかも知れません。耳も聞こえなくなったらどうしましょう?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です