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508/24/01/26/『からくり写楽 蔦屋重三郎、最後の賭け 』/野口 卓/アヒル食堂/ 中島久代
[幹事コメント]
* 2026年新年のKeysは恒例の「抱負を語る」会としました。
・実現できなかった還暦の抱負を再び「家族や周囲への配慮をしすぎず、自分のための時間を使おう」
・現在実行中の生活をさらに豊かに「自然体で雪・野菜・自然と触れ合い、(野うさぎの足跡を見つけた時のように)心にいつもみずみずしい感動を」
・声や喉を使わない生活のダメージを避けることを第一に「Keysランチ会に全回出席を目指し、よくしゃべろう」
・退職後の活動で出あった人々の、それぞれの素晴らしさに感銘を受けて「人との出会いを楽しもう」
・ネズミのように走り回って生きてきた30年近くの歳月「ネズミを脱却して人へ変身」
今年最後の回では抱負の実現度を語っていただく趣向です。(H. N.)
* 謎の絵師、東洲斎写楽の存在が様々な物語を生み出しているのが面白い。野口卓氏は徳島出身であり、同時代の徳島藩10代藩主に着目して物語を創作しているが、この藩主が解体新書の挿絵画家で、平賀源内に直接蘭画を学んだ小田野直武を重臣に持つ佐竹家の出自であることも相まって、この設定は私には説得力があった。歴史小説は、事実と称される物事を適切に捉えてインスピレーションを膨らませながら、作者が自由自在に物語を紡いでいく。読者である私は、歴史上の一つの事実としてだけ捉えていた事柄を、それに関わる多くの人々を想像しながら、重曹的に捉え直すことができ存分に楽しむことができる。やはり歴史小説は面白い。(N. N.)
* 本書の解説によると、「現在では、阿波国徳島藩のお抱え能役者・斎藤十郎兵衛が写楽ということで、ほぼ確定している」そうである。作者の野口卓も十郎兵衛の存在は十分認識していて、作品中八箇所にわたって言及されるが、蔦重の狙いは彼を「写楽の隠れ蓑」に仕立てることにあった。蔦重の東洲斎写楽こと先代の徳島藩主蜂須賀重喜が「絵だけではない。書も必須だ。謡に連歌、武術では槍、弓、馬、剣などあれこれやったな。なにしろ四男坊だ。なにかができれば、養子の口がかかるかもしれんと、親父は本気半分、冗談半分に、いやかなり真剣に考えておったようだ」と。続けて、「いや、大名の子はだれも絵はやらされたようだ。もっともよほど好きか、能力に恵まれていなければ長続きはしないがな」という下りがある。写楽の存在を、近松門左衛門の芸術論にいう虚実皮膜(芸術の真実が潜む事実と虚構の微妙な接点)にあると設定した作者の力量は見事であった。 (M. Y.)