2021年度読書会記録

2021年度

回/開催日/本/著者/店/幹事
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459/ /12/21/月夜の森の梟/小池真理子/コロナ禍休会/勝野真紀子

"伴侶を亡くした深い悲しみのあまり小池真理子さんが死んでしまうのではないかと…。長い年月を共に過ごし、ささやかなことから大イベントまで、たくさんの思い出に満ちあふれていて、夫婦とはこういうものなんだろうな、と想像してみることができました。(T.W) 深い喪失の思いを一緒に感じているような不思議な感覚で読んでいました。散文でありながら詩のようでした。突き刺さる言葉も、「老年期の落ち着きはたぶんほとんどの場合、見せかけのものに過ぎず、たいていの人は心の中で思春期だった時と変わらぬ、どうにもしがたい感受性と日々闘って生きている」そうかもしれません。私たち夫婦の行く末も思い描きながら読みました。(N. N) 先代犬を亡くした時と完全に重ねました。日常生活でふとしたはずみで涙をこぼさなくなるまで3年、病気に早く気付けなかった後悔で自分を責めなくなるまで7年、長い長い時間がかかりました。小池真理子氏の心が癒えるのはまだまだ先だろうと彼女のこれからを思いやった次第です。ですが彼女はすでに自分を律する手段を持っていると思いました。各エッセイの結びでは周囲の自然の営みに目を向け、人もその自然の一隅にあることを自ら語っていると思いました。(H.N) 「悲しい」とか「辛い」という言葉を使わずに喪失感を表現するというのはこういうことか……と、しみじみ読みながら何度も鼻の奥がジンと熱くなりました。愛し愛された日々の記憶、慟哭にも似た真っ直ぐな感情、計り知れない彼女の悲しみの叫びが綴られた各章を読み終える時、決して後戻りしない季節の移ろいが描かれており、それがまた不思議なほどの余韻をもたらしてくれました。(M.K)"
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458/27/11/21/起き姫 口入れ屋の女/杉本章子/蓮/中島久代

1. 起き上がり小法師がモチーフで、何があっても起きあがろうとする気概、自分らしく誇りを持つこと、それが生きるということなのだと。(N. N.)
2. 江戸の暮らし、なりわい、言葉が人情豊に描かれ、口入れ屋に関わるすべての人がつながってハッピーエンド。季節の移ろいが今よりもっと肌身に近く、男女や生き死にが今よりおおらかだったように感じます。(H.K.)
3. 起き姫口入れ屋の女、とてもいい本でした、他の作品も読みたくなりました。(Y.S.)
4. 「浮き名もうけ」という粋な言葉を覚えました。(M.Y.)
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457/ /10/21/紫式部ひとり語り/山本淳子/コロナ禍休会/金城博子

 「「世」、「身」、「心」をめぐるフィクションとしての物語にこそ、時代を越えたリアリティがあるという『源氏物語』の作者の自信は流石であるし、優れた文学論になっていることに感銘を受けました。と同時に、『紫式部日記』などを通しての率直な肉声にも感心しました。」( MY)
 「源氏物語を通した紫式部だけでなく、当時の歴史的な背景が丁寧に描かれており、一条天皇や中宮彰子、藤原道長なども含めて、生活の匂いのする身近な存在に感じることができました。一条天皇をめぐる女性たちの才気溢れる顔ぶれに、圧倒されますね。」(NN)
 「これが『源氏物語』の作者紫式部の「打ち明け話」(著者曰く)だとすると、雅なだけではない平安の女たちのリアリティと、彼女たちが現代人より心が自由なのは生きるためであったと感じました。」(KH)
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456/ /9/21/モモ/ミヒャエル・エンデ/大島かおり訳/コロナ禍休会/中竹尚子

「生きるということ」この思い題材を、児童小説の抽象化された世界で描き、はっきり答えが用意されていないので、何度読んでも、心のどこかで気になってしまいます。それぞれの体験も様々なので、読んで得られるものもそれぞれだと思います。モモは人の話をよく聞いてくれます。感じてくれます。大事ですね😊
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455/ /8/21/おひとりさまの老後/上野千鶴子/コロナ禍休会/中島久代

 (N.Nさんの読後感):還暦を迎え、自分の老後を考え始めた私は、本書では第二章、第三章あたりを漠然と考えている程度ですが、いずれは一人という思いは、なぜか若い頃からありました。子どもを育てていても、現代社会は仕事で住むところが決められるので、同居は無理です。上野千鶴子さんは14年前にこの本を出版しているので、五十代であれだけの老後の知識と知恵を持って紹介しているのですかね。びっくりです。介護の章はちょっとショックでした。親の介護は経験していても、自分がそのような状況になることを考えたくない。拒否する自分がいるのに気付かされました。まだまだこれからいろんな覚悟が必要になるのでしょう。今後の自分を考える第一歩の貴重な本になりました。
 (H.Nさんの読後感):子どもがいない私は、早くから「いつかは一人」を覚悟しているつもりでしたが、介護される身になるところまでは、親たちの経験を経ても、実感が伴っていませんでした。体力と気力の低下を実感している今、「介護は遠からず、現実的になれ」と目が覚めた気持ちでした。
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454/31/7/21/華氏451度〔新訳版〕/レイ・ブラッドベリ (著), 伊藤典夫 (翻訳)/蓮(ランチKeys)/山中光義

(M.Kさんの読後感):「最初の語り口から近未来的なSF小説なんだろう、と思いつつ読み進めていったのですが、そこに描かれていた世界は我々が生きる現実世界かと見まがうほど!!!朝から晩までさまざまなSNSに囲われ、メディアから流れてくる膨大な情報にどっぷり漬かり、受け売りの情報の波の中で真実とは何かを自ら考え問い続けることをしなくなった現代人の姿が恐ろしいほどぴったりと重なってきます。あらゆることがスピードを求められ、効率が重視される社会、多様性を謳いながらどこかしら窮屈になっていく世界。。。「本を焼き払う」という衝撃的な行為で描かれた世界は、今、現にこうして巨大な情報システムの中で日々の生活を享受している私たちへの痛烈なメッセージのような気がしてなりませんでした。」
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453/26/6/21/おもかげ/浅田次郎/コロナ禍休会/渡邊稔子
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452/ /5/21/そしてバトンは渡された/瀬尾まいこ/コロナ禍休会/末信みゆき
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451/24/4/21/その名にちなんで/ジュンパ・ラヒリ/コロナ禍休会/千葉敦子

文字を拡大して読めない恨めしさを抱きながらの読了でしたが、まるで細密画を観るような描写の連続でした。ロードアイランド(州)、プロヴィデンス(州都)は60年近く前に住んでいたところで、近隣のボストンにはしょっちゅう出かけ、時折ニューヨークにも足を伸ばし、ヴァーモント州にも知人を訪ね、そして何よりブラウン大学は自分が在籍していた大学で、夕食を済ませてから席をキープしていた図書館に戻るという話、異文化体験の葛藤, etc. etc.、遠い過去に思いを馳せるsentimental journeyとなりました。(M.Y)
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450/27/3/21/田辺聖子の古事記/田辺聖子/コロナ禍休会/勝野真紀子

 ある時は非情なくらい残酷に殺し合い、またある時は溢れ出る感情のまま踊り笑い、そして時にはタブーの愛も乗り越えようと愛の讃歌を高らかと詠う。そんな「古事記」の神々たちのおおらかで生命力あふれる様は、 今、歯痒くも息苦しい日々を送らざるを得ない我々に一陣の風を届けてくれたのではないでしょうか。また「古事記」から感じられる力強さの元をたどれば、一語一語に込められた 伝承の力であり、それはまさしくバラッドにも通ずるものですね。
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449/ /2/21/アフガニスタンの診療所から/中村 哲/コロナ禍休会/中竹尚子

 「近代文明の野蛮」という言葉が突き刺さる内容でした。「第20回アジア貢献賞」を受賞された松本敏秀さんはミャンマーでの歯科活動の際、「ミャンマー人の問題はミャンマー人で解決する」という信念を堅持されていたそうです。福岡県輩出の優れた活動家は中村哲さんだけではなかったです。
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448/ /1/21/小説伊勢物語 業平/髙樹のぶ子/コロナ禍休会/山中光義

 寄せられた読後感:「伊勢物語は古典の教科書ではお馴染みでありましたが、雅な光景と人としての魅力を存分に堪能できる小説であったと、今更分かり深く感動しております。業平の魅力は、様々な女性の情感を悉く汲み取る感性を持ちながら、なおそのための努力を惜しまず、時には報われなくて悩む様が愛おしいと感じさせるところです。やはり、それは高樹のぶ子の力と思われます。光源氏よりも共感が持てます。」(N.N) /「私は次の箇所:「崩し字の、連綿とした流れは、昨夜の恋に酔うままの業平にとりまして、まるで滑らかな陰(ほと)を思わすほどのやわらかさ。」(「朧月」Kindle の位置No.2609-2611)に衝撃を受けました。原文にこのような表現があるのだろうかと、多少調べてみましたが、わかりません。きっと高木のぶ子の鬼気迫る想像力が生み出した表現だと思います。流石に、谷崎潤一郎賞(『透光の樹』)をとった作家だと思いました。(M.Y)